目次
ベライゾン・コミュニケーションズ【VZ】の基本情報と歴史
ベライゾン・コミュニケーションズはAT&Tと並ぶアメリカの大手通信事業者です。米国内ではAT&Tに次ぐ規模でほとんどこの2社がシェアを占めています。アメリカの1億1千万人を持つベライゾン・ワイヤレスを傘下に持ちその他消費者向けにインターネット・音声・データ通信を提供しており、また政府機関向けや大企業にグローバル・セキュリティ・クラウドサービスも提供している米国の代表的通信事業者です。ネット広告事業を拡大するために2015年にAOLを買収し、さらに米ヤフーを買収するなど通信料以外の収益源を拡大すべく取り組んでいます。
次世代5G技術の商用化をいち早く行い現在は対応端末の拡充やネットワークの高速化に注力し、通信事業でさらなる高速ネットワークの提供を目指しています。
13年の連続増配銘柄であり、配当収入が長期にわたり期待できる銘柄です。
また、NYダウ平均30種の構成銘柄でもあります。
企業情報(創業年・上場年と市場・従業員数・決算・S&P格付け
増配年数 | 13年 |
S&P格付け | BBB+ |
従業員数 | 135000人 |
創業年 | 1983年 |
上場年 | 1983年 |
決算 | 12月 |
ベライゾン・コミュニケーションズ【VZ】の株価推移
ベライゾン・コミュニケーションズの株価(2019年10月28日現在)です。ITバブル期の株価を超えられない状態が続いてはいますが、現在株価は上昇し当時の株価を超える兆しが見えつつあります。
実際に5Gを活かした事業が始まり、そのスタートをいち早く切ることが出来ただけに先行者としてどこまでやれるかが注目されています。
コンテンツ事業への参入を進めるAT&Tとは対照的に通信事業への特化姿勢を示しています。株価チャートを見れば、通信事業に特化しようとするベライゾンの方が高い評価を受けているようにも見えます。
PERとPBRの推移

PERは「株価収益率」であり、その株式が収益の何倍で取引されているかを表しており一般的には割安か割高かを測る代表的な指標の一つと言われています。
ただし、これは先行きの業績に対する投資家の期待を表している面もあり低PERの株が本来の価値より割安なのではなく、万年割安株となる可能性もある事に留意しましょう。反対に高PERの株が一概に割高と言った訳でもなく、その高いPERは将来の成長によって正当化される可能性があります。(収益が上る=株価収益率は下がる)
また、自社株買いによってEPS(1株あたり利益)が上がることでもPERは低下します。
PBRは「株価純資産倍率」を表し会社が保有する純資産の何倍で株式が取引されているかを表します。1倍を下回れば会社清算時の残余財産分配額を下回る事になるため割安と言えます。
しかし、不人気な業種だったり将来性が乏しいとされる企業は1倍を切ったまま放置される事がある事とその純資産は全てが換金可能とは限らない事に注意しましょう。
これらは、業種別で比較することでより参考になります。
ベライゾン・コミュニケーションズ【VZ】の企業分析・注目ポイントと今後の事業展開
事業構成

事業の構成比率を表しているグラフです。個人と法人向けの通信事業が大多数の比率を占めます。5Gによるデータ通信需要でどこまでその売上を拡大する事ができるかが鍵となるでしょう。
国・地域別売上高比率
その企業の売上高が地球上のどこで生み出されたものなのかを表しています。ほぼ100%を米国内で得ています。
AT&Tとは違った方向性
前述のようにベライゾン・コミュニケーションズはAT&Tに次ぐ規模の大手通信会社であり、2社でアメリカの市場を圧倒していますがその将来的な方向性は大きく違います。
AT&TはディレクTVやワーナーメディアの買収を通じてストリーミング配信事業に参入、ベライゾン・コミュニケーションズは5Gをいち早く商用化しその通信品質を更に向上させるべく投資と対応端末の拡充を進めています。
高速通信需要が高まり、2019年の業績は好調でした。2020年以降その流れと活用範囲は更に広がると見られますので経営陣は業務効率化などによるコストカットで増収増益を狙っています。
第5世代移動通信システム(5G)
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は同業のAT&Tがコンテンツ事業を拡大しているのと対照的に通信通信事業を第一に投資を行っており、M&Aによる新規事業取得よりも米ヤフー等の同業者の買収による技術向上、通信ネットワークの改良・改善を最優先する戦略に取り組んできました。
特に直近では5Gへの先行投資がその例と言えます。2018年に同業の通信大手であるAT&T(T)との買収合戦を行った末、ストレート・パス・コミュニケーションズを買収し5G回線開発の競争で優位に立っています。
この5Gは回線速度の上昇と更なる収益をもたらすことが期待されており、通信業界のみならず、自動運転に加えクラウド、医療・ヘルスケアも含めた様々な分野での活用が模索されているため世界中からの注目を集めています。
成長性が衰えている通信事業
通信事業者等には共通のポイントとして、現在の携帯電話普及率これまで爆発的な増加をしてきましたが飽和状態となりこれ以上は難しく頭打ちになった状況で成長性に欠けています。
さらにIT業界ではGoogle、Apple、Amazon、Microsoftなど非常に強力な企業が多く競争も激化しています。
現在ベライゾンは更なる通信インフラの改良とコスト削減に取り組んでいるうえ米国は人口増加が予想されており、その人口増加に伴い通信料収入は伸びるとされるのですがそれでも非常に時間がかかり緩やかな成長となるでしょう。
ベライゾン・コミュニケーションズ【VZ】の財務分析
直近5年をグラフにしてそれより前のデータがあるとより理解が深まると思われるものはグラフの外で更に5年ほど前まで載せています。
売上高と営業利益等の推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
売上高 | 107,808 | 106,565 | 110,875 | 115,846 | 120,550 | 127,079 |
営業利益 | 18,825 | 15,919 | 12,880 | 13,944 | 31,968 | 19,599 |
売上高と営業利益等、損益計算書項目の推移を示しています。
非常に緩やかながらも成長していると言えるでしょう。
営業利益と純利益の推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
営業利益 | 18,825 | 15,919 | 12,880 | 13,944 | 31,968 | 19,599 |
純利益 | 4,894 | 2,549 | 2,404 | 875 | 11,497 | 9,625 |
営業利益と純利益はその年に起きる様々な要因により若干の幅があります。売上高の成長と共に営業利益も成長していっており、まだまだ成長余地があることをうかがわせます。
営業利益率と純利益率の推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
営業利益率 | 17.46% | 14.94% | 11.62% | 12.04% | 26.52% | 15.42% |
純利益率 | 4.54% | 2.39% | 2.17% | 0.76% | 9.54% | 7.57% |
営業利益率と純利益率に関して、これは十分な数値と言えるでしょう。設備の維持管理に莫大なコストがかかる業界としては相当優秀な部類の企業であると思います。
BPS・EPS・SPSの推移

2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
EPS | 4.37 | 3.21 | 7.36 | 3.76 | 4.65 |
過去のデータ
2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
EPS | 1.72 | 0.9 | 0.85 | 0.31 | 4 | 2.42 |
順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。
直近のEPSは概ね横ばいとなっていますが、5Gの対応に伴う莫大な設備投資があった上でのことだと考えると仕方ない面があるかもしれません。
BPSは年々増加傾向であり、足元の土台を固めてきています。
貸借対照表

貸借対照表の概略です。ここでは特に流動比率を見ると良いでしょう。流動資産が流動負債の額を上回っていれば短期的な債務を早期に完済する事が出来ると見込まれるからです。しかし、流動資産にも即時換金できるものばかりではないため内容が重要な事に注意しましょう。流動比率200%超えや当座(現金同等物)比率100%超えがより厳密に見た安全性の指標とみなされています。
総じて負債が大きい会社でありながら、殆どは長期債務であり流動資産比率は若干低いもののすぐに問題が出てくると思われるほどではありません。有形固定資産に該当する設備投資を進めたため貸借対照表が大きくなっています。
キャッシュフローの推移

2012 | 2013 | 2014 | |
営業CF | 31,486 | 38,818 | 30,631 |
フリーCF | 233 | 34,533 | 11,439 |
営業キャッシュフローは営業活動による収支、投資キャッシュフローは投資活動による収支、財務キャッシュフローは借入金の返済や配当・自社株買いなどを表します。新規借入などを行った時はプラスになる事があります。
フリーキャッシュフローは株主にとっては特に重要で会社が自由に使えるお金を指します。これが内部留保になったり、配当・自社株買いの原資となるからです。
EPSや営業利益などとは少し違い、キャッシュフロー自体は比較的良好です。営業キャッシュフローは増加傾向にあり、フリーキャッシュフローも安定した金額を維持しています。
ROE・自己資本比率・営業キャッシュフローマージンの推移

こちらは経営の効率性を示すROE、健全性を示すROE、営業活動からどれだけ効率的にキャッシュフローを得ているかを示す営業キャッシュフローマージンです。
ROEが高い企業は設備投資や自社株買いを通じて資本を効率的に活用していることを示しているため、高ければ高いほど自己資本比率は下がる傾向にあります。
自己資本比率はその名の通り総資産に占める自己資本の割合で計算されます。
営業キャッシュフローマージンは売上高のうちどれだけの金額を現金で得る事ができたかを見る指標です。高いほど売上額から経費をかけず会社に現金収入をもたらしていると言えます。営業キャッシュフローが営業利益を下回る場合はその営業利益が現金ではない別の入り方をしている事に注意しましょう。
一概に言えるものではありませんが、15%を超えていれば良好と言えるでしょう。
設備投資額と研究開発費の推移

設備投資や研究開発費の多い会社は成長企業と見られ、将来が期待されている事が多いです。中には維持費的なものもあるので多額の設備投資や研究開発費が何を目的にしているかは見極める必要があります。
ベライゾン・コミュニケーションズ【VZ】の株主還元
配当と配当性向・増配率の推移

配当金と配当性向の推移を記載しています。配当金は13年に渡る連続増配が行われており、少しずつ増加しています。
配当性向はAT&Tに対してもかなり良好でまだまだ増配余力があるように感じられます。このあたりも投資家に好感されてきた理由の一つと言えるでしょう。
発行済み株式数の推移

自社株買いなどによって発行済み株式数が減るほど、一株当たりの価値は向上し株主に利益をもたらします。
まとめ
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は米国内でAT&T(T)に並ぶ2強で、通信事業に力を入れ続けてきました。5Gに関しては業界内でリードしています。良くも悪くも安定した、高配当連続増配銘柄であり配当狙いの投資にはお勧めです。基本的には成熟企業ですが営業利益も上がっており、5Gの行先次第ではさらなる成長が見込めます。
このようにAT&Tと並ぶ通信会社でありながら違った同社とは違った路線を歩んでいます。将来的により成長するのは通信事業に専念したベライゾンか、配信事業にも力を入れたAT&Tなのか今後の世界の流れで変わります。
どちらも増配を続けており、配当金を目的に投資するにはかなり良い企業です。