司法省がVISAを提訴 決算インフラの競争環境

アメリカ合衆国司法省は11月6日、VISAが行おうとしているフィンテック企業プラッド(Plaid)の53億ドル(約5500億円)相当での買収計画に対して、「VISAが電子決済市場における違法な新興企業の排除を目論んでいる」として反トラスト法の適用を求めてVISAをサンフランシスコ連邦地裁に提訴しました。

 

プラッドはアプリケーションを通じて銀行口座と連携させ送金を可能にするサービスであり、PayPalの子会社「ベンモ」などに対して重要なデータを提供しており、この「ベンモ」を通じて決済に関するデータを得ることによりPayPalはVISAの決済インフラに頼ることなく個人・法人間での送金を行っています。

 

このシステムはフィンテック企業にとって非常に重要な銀行口座との連携を可能にするシステムであり、現在及び今後生まれてくる新たなフィンテック企業がVISAの決済インフラを利用せずに事業を行うために重要なポイントとなっていました。

司法省は従来より、VISAやMasterCardなど大型決済事業者によるフィンテック事業の買収に対して注目を続けており、2020年の6月にはVISAがプラッド買収に関して助言を求めたコンサルタント会社である「Bain」に対してVISAの決済サービス事業とその収益構造において競合企業関連するデータを含めた関連書類の提出を求めたところから始まっています。

この請求はVISAが行うフィンテック企業の買収が電子決済サービス全体に与える影響に関して調査する目的であったとみられますが、「Bain」は本案件に係る情報を部外秘であるとして書類作成を拒否しました。

他にもMastercardによるFinicityに対する10億ドル(約1040億円)の買収提案や、Intuit(インテュイット)の信用情報調査に活用が可能な信用情報のスコア化を行うベンチャー企業であるCredit Karma(クレジットカルマ)に対する70億ドル(約7310億円)の買収提案にも注目しています。

 

これに対しVISAは

「この行動は、プラッドの事業に対する理解の欠如と、VISAが運営する競争の激しい支払い環境を反映しています。VISAとプラッドの組み合わせは、幅広い金融関連サービスの利用を求める消費者に大きな利便性に基づくメリットをもたらします。よってビザはこの取引を積極的に擁護するつもりだ」

「法的欠陥があり、事実と相反している」として反論しています。

なお、当時の両社は非公開企業であり、大手銀行が所有していた1998年の10月にも「同じ銀行団から両者の取締役が派遣されておりそれぞれが競合である片方に対して非競争的な行動を続けてきた」としてVISA、MasterCardは提訴されています。

その内容として、MasterCardが1980年代にスマートカード(コンピュータチップが埋め込まれたカード)の開発でVISAよりも優位な地位を有していたにも関わらず、取締役会はVISAの合意なしには採用しないと決定したことを上げていました。

これは後にヨーロッパでは広く普及していたにも関わらず、2社が共謀してその開発と導入を妨害し米国の消費者に不利益を与えたとして大きな問題になりました。

他にも、2012年にVISAとMasterCardが小売店からクレジットやデビットカードの決済手数料として徴収する金額を固定し、引き下げ交渉に応じない上に顧客により決済手数料が安い手段の利用を推奨する事を禁じた事が優越的地位の濫用であるとして反トラスト法の適用を求め提訴し、当時の反トラスト法に関する民間訴訟としては最大の和解額(約60億5千万ドル)で決着したと言った事もありました。

VISAはクレジット決済の約55%、MasterCardはその約35%と非常に高いシェアを両社ともに持っており、競争原理が働かないと非常に大きな被害を消費者や新興企業は被る事になります。

今後現れるフィンテック企業の多くが、VISAの決済インフラを利用せざるを得ないとなればそれはVISAが市場を支配すると言っても過言ではなく、今後の業界に大きな影響を与える可能性があります。

一方で株主にとっては、参入障壁の強化と更なる市場での優位性を獲得する事を意味しており大きなメリットがあります。

利用者は利便性の向上で利益を得る事も、利用料金に歯止めが効かない事で不利益を被る事もどちらも考えられます。

反トラスト訴訟に晒されているのはこのように、GAFAだけではありません。そして、他の業界の動きが別業界に波及することは多々あるので投資家は日々その状況を注視すべきでしょう。

 

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