目次
VISA【V】の基本情報と歴史
ビザ「VISA」(V)は世界的な決済サービスを提供しているクレジットカード会社です。元々はバンク・オブ・アメリカのクレジットカード部門でしたが、そこから独立し現在のVISAになりました。この名前の由来は「金融界のビザとして、各国地域の市場ニーズに合わせた貨幣価値を国際決済サービスで提供する世界通貨」を意味しています。クレジットカードの世界シェアは約60%を占めておりまさに世界の決済通貨とも言えます。
2016年に2008年の上場時に別会社となったVISAヨーロッパを買収し、世界全体でビジネスを行い始めました。その後はキャッシュレスの普及率がより低い、新興国を中心に投資を続けています。
2005年まで使われていた、この旧ロゴマークは青色の部分がバンク・オブ・アメリカが設立された地であるカリフォルニア州の青い空を表し、下の部分は金色の丘を表しているそうです。
ビザ「VISA」は決済インフラを提供するのみで決済手数料を稼ぐビジネスモデルでカード自体は発行せず、クレジットカード利用者に対する回収業務や貸し倒れリスクはライセンスを受けてカード発行を行った会社が負うため低リスクかつ高収益な事業が展開できています。
そのため一見、同業者に見えるアメリカン・エキスプレス【AXP】は自社でカード発行を行い貸し手としての性質を持っている点で根本的にビジネスモデルが違い、金融セクターに分類される事が多いです。
企業情報(創業年・上場年と市場・従業員数・決算・S&P格付け
増配年数 | 12年 |
S&P格付け | AA- |
従業員数 | 19500人 |
創業年 | 2007年 |
上場年 | 2008年 |
決算 | 9月 |
VISA【V】の株価推移
PERとPBR・配当利回りの推移
グラフK バリュエーション
PERは「株価収益率」であり、その株式が収益の何倍で取引されているかを表しており一般的には割安か割高かを測る代表的な指標の一つと言われています。
ただし、これは先行きの業績に対する投資家の期待を表している面もあり低PERの株が本来の価値より割安なのではなく、万年割安株となる可能性もある事に留意しましょう。反対に高PERの株が一概に割高と言った訳でもなく、その高いPERは将来の成長によって正当化される可能性があります。(収益が上る=株価収益率は下がる)
また、自社株買いによってEPS(1株あたり利益)が上がることでもPERは低下します。
PBRは「株価純資産倍率」を表し会社が保有する純資産の何倍で株式が取引されているかを表します。1倍を下回れば会社清算時の残余財産分配額を下回る事になるため割安と言えます。
しかし、不人気な業種だったり将来性が乏しいとされる企業は1倍を切ったまま放置される事がある事とその純資産は全てが換金可能とは限らない事に注意しましょう。
これらは、業種別で比較することでより参考になります。
VISA【V】の企業分析・注目ポイントと今後の事業展開
事業構成
事業構成
事業の構成比率を表しているグラフです。100%決済インフラの提供を事業としています。この事業は細分化すると決済サービス事業・国際取引・データ関連事業の3つに分かれており、バランスよく運営されています。
国・地域別売上高比率
国・地域別売上高比率
その企業の売上高が地球上のどこで生み出されたものなのかを表しています。マスターカードの米国内売上は40%以下なのに対し、VISAは55%と非常に大きな割合を占めています。
米国経済や消費動向の影響をより大きく受ける企業であると言えます。
キャッシュレス決済の拡大と高い参入障壁
なんといってもVISAの今後の注目点は世界におけるキャッシュレス決済の普及率でしょう。キャッシュレス決済は現在、主要な国々では40~60%の普及率が多く(アメリカは45%、日本は20%前後)なっておりますがその規模は年々増加しています。
キャッシュレスにはクレジットカードの他にタッチ決済、QRコード決済など凡ゆる分野が含まれており、今後市場そのものが大きく拡大を続けると言った何物にも変え難い強みを有していると言えます。
それに加えて参入障壁は極めて高く、日本のJCBや中国のUnion Payは実質その国での利用者が中心であることを考えると本当の意味で世界中で利用される決済ブランドとしての競合はVISAとMasterCardだけと言っても過言では無いでしょう。
日本は人口が今後減少していくと見込まれていますが、世界全体では人口が増加すると見込まれており、新興国の発展も考慮すると今後さらにキャッシュレス決済は増加することが期待できます。世界の人口・経済規模の拡大に伴い増えると予想されるキャッシュレス決済ですが、その中のクレジットカード決済で60%のシェアを持つVISAは恩恵を得られるでしょう。
の競合企業とその中での地位
[adsense]の業績データ
売上高と営業利益等の推移
グラフA 売上高と利益
売上高と営業利益等、損益計算書項目の推移を示しています。売上高も営業利益も長く2桁成長を続けており、売上高は10年で3倍、営業利益は5倍に迫っており非常に高い成長が続いていると言えます。
キャッシュレス決済の普及率はまだまだ低くこれからも伸び代があると言えるでしょう。
営業利益と純利益の推移
グラフB 営業利益と純利益
営業利益と純利益も右肩上がりに伸びています。
営業利益率と純利益率の推移
グラフC 営業利益率と純利益率
VISAで特にすごいポイントとして、この営業利益率の高さが挙げられます。純利益率とほぼ一致しており、60%を超える営業利益率というのはあらゆる会社の中でも凄まじいものがあります。
2012年は後述の決済手数料関連の民間訴訟の和解費用が嵩んだ為であり、翌年度からは戻っています。2016年も別件の一時的な費用によるものです。
VISAやMastercardのような決済インフラに特化する事業は事業規模と必要経費に相関関係があまりありません。その為、売上高の上昇とともにこの営業利益率は年々ゆっくりと上昇しています。
営業利益率・純利益率・売上高成長率の推移
グラフD 成長率
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1株の価値(BPS・EPS・SPS・CFPS)の推移
グラフE 1株の価値
グラフE2 1株当たりの売上高
グラフE3 EPSと1株当たりフリーCFの比較
順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。
CFPSは会計上の利益では無くフリーキャッシュフローの面から数字を出します。基本的にEPSと一致しますが、会計処理の方法が変わったり「純利益は減少したがフリーCFは増加した」場合などにより正確な情報を読み取る事ができます。
EPSとSPSの伸びがかなり強いことがわかります。2016年と2012年は前述のような訴や一時的な費用によるものです。
売上高と共に伸びるEPSは10年間で7倍近くになっており、非常に高い成長が続いています。
キャッシュフローの推移
グラフH キャッシュフロー
営業キャッシュフローは営業活動による収支、投資キャッシュフローは投資活動による収支、財務キャッシュフローは借入金の返済や配当・自社株買いなどを表します。新規借入などを行った時はプラスになる事があります。
フリーキャッシュフローは株主にとっては特に重要で会社が自由に使えるお金を指します。これが内部留保になったり、配当・自社株買いの原資となるからです。
営業キャッシュフローもフリーキャッシュフローも売上高の成長と共に伸び続けています。
営業キャッシュフローの殆どがそのままフリーキャッシュフローになっており、設備投資や必要経費との相関関係が無い事が大きな影響を与えています。
ここでは主に営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローを紹介します。投資や財務コストに関しては設備投資やインスタント・カバレッジ・レシオを参照ください。
グラフS キャッシュフロー比率
営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローの成長率と売上高に対する投資の規模を示しています。
投資がどれだけ売上高に結びついているかを知ることができます。
VISA【V】の株主還元の推移
配当金・配当性向・増配率の推移
グラフF 配当と配当性向・増配率
配当金と配当性向の推移を記載しています。それなりの増配率で増配をしてもEPSが大きく成長しているため、配当性向は低く抑えられたまま安定しています。
今後も増配を続けられる良いポイントでしょう。安定した配当性向と高い増配率が続いており、長期保有すれば高利回りかつ大きな株価上昇も見込めます。
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発行済み株式数の推移
グラフL 発行済み株式数
自社株買いなどによって発行済み株式数が減るほど、一株当たりの価値は向上し株主に利益をもたらします。
増配も積極的に行いながら、自社株買いにも大きな資金を投じています。前述のように配当金も支払いながら、自社株買いにより株価上昇を見込めるため株主にとっては大きなリターンが望めます。
[adsense]VISA【V】の財務諸表と財務データ
グラフO・P 貸借対照表
貸借対照表の概略です。ここでは特に流動比率を見ると良いでしょう。流動資産が流動負債の額を上回っていれば短期的な債務を早期に完済する事が出来ると見込まれるからです。しかし、流動資産にも即時換金できるものばかりではないため内容が重要な事に注意しましょう。流動比率200%超えや当座(現金同等物)比率100%超えがより厳密に見た安全性の指標とみなされています。
多めの現金を有し、それを持って流動負債を完済する事ができる水準となっています。財務状態そのものは良好な類でしょう。
グラフR 損益計算書(費用と利益)
業績の蘭で紹介済みの収益に対応した損益計算書の費用項目と残った利益を表記しています。
財務状態と健全性
グラフG 財務データ
ここでは、有利子負債比率・自己資本比率を紹介します。この自己資本比率と有利子負債比率は企業の健全性を大きく表しているので注目しましょう。
グラフQ 財務比率
流動比率、当座比率、財務レバレッジ、負債比率を示しています。
流動比率は流動負債に対する流動資産の割合で計算され、短期的な支払い能力を示しています。当座比率は、流動資産の中で「現金預金」「受取手形」「売掛金」などの現金化しやすい資産だけで計算される、流動比率よりも厳しい基準で見た短期的支払い能力の指標です。
財務レバレッジ銀行借入や社債発行などを活用して自己資本を梃子(レバレッジ)にどれだけ負債を活用しているかを示しています。後述される自己資本比率の逆数関係にあり、負債をどのくらい有効活用しているかを表すため、この倍率が高くなると、負債増加によるリスクが顕在化するため注意する必要があります。
設備投資額と研究開発費・減価償却費の推移
グラフJ 事業投資
設備投資の多い会社は成長企業と見られ、将来が期待されている事が多いです。中には維持費的なものもあるので多額の設備投資が何を目的にしているかは見極める必要があります。
新興国を中心にキャッシュレス決済が普及していない地域などに積極的に展開を続けています。新たなカード以外の決済手段にも力を入れており、成長のため投資を続けています。しかし、設備投資の伸び以上に売上高の成長が著しく営業利益率は向上しています。
ROE・ROA・営業キャッシュフローマージンの推移
グラフI 経営の効率性
こちらは経営の効率性を示すROE、健全性を示すROE、営業活動からどれだけ効率的にキャッシュフローを得ているかを示す営業キャッシュフローマージンです。
ROEが高い企業は設備投資や自社株買いを通じて資本を効率的に活用していることを示しているため、高ければ高いほど自己資本比率は下がる傾向にあります。
自己資本比率はその名の通り総資産に占める自己資本の割合で計算されます。自己資本比率は4割程度と落ち込み気味ではあるもののかなり健全な数値で推移しています。
営業キャッシュフローマージンは売上高のうちどれだけの金額を現金で得る事ができたかを見る指標です。高いほど売上額から経費をかけず会社に現金収入をもたらしていると言えます。営業キャッシュフローが営業利益を下回る場合はその営業利益が現金ではない別の入り方をしている事に注意しましょう。
一概に言えるものではありませんが、15%を超えていれば良好と言えるでしょう。
営業利益率と同じように50%を超えています。非常に良好でキャッシュフローが右肩上がりしているのも頷けるでしょう。
グラフI-2 経営の効率性2
こちらでは投下資本利益率(ROIC)、インスタント・カバレッジ・レシオ、資産回転率の推移を示すグラフを掲載しています。
投下資本利益率は自己資本や有利子負債も含めた事業活動のために行われた投資がどれだけの利益を生み出したかを数字にしています。
インスタント・カバレッジ・レシオは、会社が営業活動により生み出す利益(基本的に営業利益)と金融収益(受取利息と受取配当金が主に該当)が、毎年の支払利息をどの程度上回っているかを示しており、 企業の財務健全性を示す数値であり、この数値が高いほど金利の支払いなどに関して財務的に余裕があります。反対に比率が低いと営業収益のうち多くの割合が支払利息に当てられる形で負債元本が減らず、財務上厳しい状態にあります。
総資産回転率は企業の資産が効率的に売上に結びついていることを表す指標であり、企業の総資産が1年に何回売上高という形で回転したのかを示しています。
財務効率と回転率等
ここでは財務効率などに関連した数値を解説していきます。
グラフU 財務効率
ここでは、売掛金回収期間と在庫日数、回収期間、現金循環日数を紹介していきます。
売掛金回収期間は売掛金がどれくらいの期間をかけて回収されているかを日数で表しており、その日数が短いほど現金化までにかかる期間が短く資金を効率的に活用できていることになります。
在庫日数は在庫として滞留している日数を表しています。在庫として保有している商品の総数が売上の何日分と言い換えることも出来、この日数が少ないほど在庫量は適正な数にコントロールできていると考える事ができます。
回収期間は投資金額が投資によって生まれるキャッシュフローで計算して何年で回収することが出来ているかを表します。設備投資に関する収益性計算には様々な方法が存在しますが回収期間を指標とした場合、この期間が短いほど安全に効率的な投資ができていると考える事ができます。
現金循環日数は「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」とも言われ、企業が商品を仕入れるために支出を行なってから売上及び売上債権の回収によって現金を得るまでの期間を指します。この日数が長いほど、手元の現金が減っている期間が長い事になり資金繰りの懸念が現れるため、経営状態を表す重要な指標とも言えます。
グラフV 財務効率 回転率
ここでは、回転率を中心に解説します。売上債権回転率、棚卸資産回転率 固定資産回転率 資産回転率を紹介しています。
売上債権回転率は会社が有する売上債権の回収がどのくらいの期間で行われているかを示す指標で、この数字が低いほど債券の回収に時間がかかっており、資金の効率的な活用が妨げられている事になります。
棚卸資産回転率は在庫回転率と言われることもあり、仕入から売上に至るまでの在庫期間によって適切な在庫量などの判断をするための指標であり、在庫を減らしている会社はこの比率が高くなります。在庫回転率が低いと言う事は顧客に販売される事なく在庫として保持する数が多く、管理コストや廃棄リスクを負っていることになります。
固定資産回転率は保有する固定資産が効率的に活用されているかを示しています。この比率が低い場合は保有する固定資産が有効に活用されることなく滞留している疑いがあり、固定資産への投資が過剰である可能性があります。
総資産回転率は企業の資産がどれだけ効率的に売上に結びついているかを表す指標であり、企業の総資産が1年に何回売上高という形で回転したのかを示しています。売上高が総資産の何倍あるかを見ることでその売上に貢献した企業の総資産がどれほど効率的に活用されているかを測ります。(「グラフI-2 経営の効率性2」で解説済みです)
まとめ
誰もが知っている、電子決済の巨人です。営業利益率が60%前後と驚異的な数字であり、今なお成長を続けています。
新興国の発展や電子決済の普及により更なる成長が見込めるので注目する価値はあるでしょう。
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