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ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】の基本情報と歴史
ジョンソン・エンド・ジョンソンは特に医療機器の世界で世界首位であり、医薬品では世界5位で60カ国を中心とした世界中に250社以上の子会社を有する世界最大のトータルヘルスケア企業です。消費者、医療機器・医薬品という3つの事業区分により構成されそれぞれの研究・開発・製造・販売などを手掛けています。医療機器では世界シェア首位級を誇り、身近なブランドで代表的な物ではバンドエイドなどがあります。研究施設は米国、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、日本、オランダ、シンガポール、スイス、英国にあります。また、リーマンショックを始めそれ以外にも起こった数々の危機を乗り越え50年以上の増配を続けている配当王銘柄でもあります。
ロバート・ウッド、ジェームス・ウッド、エドワード・ミードのジョンソン三兄弟が創業した。滅菌の概念を世界で初めて製品に導入。50年以上10%成長を続けている。家庭用のバンドエイドや綿棒、ベビーオイルから医療機関で使用する医療機器、薬剤、薬、コンタクトレンズのアキュビューなどを製造販売している。一般企業の社訓にあたるOur Credo(我が信条)が有名。
Wikipediaより引用(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
滅菌の概念を世界で初めて製品に導入とはまさに当時の世界を変えた企業です。この長い歴史の中で多くの人の命を救って来ました。
2019年に日本のドクターシーラボを買収し、その後も肺癌手術を主体に手術のロボット技術を有するオーリスヘルスを買収するなど今もなお新しい医療のために企業規模の拡大を続けています。
医薬品事業と医療機器事業の区分に加え、以下のように売上の地理的な分散もされており非常に安定した事業を行っています。
この事業の安定性は債務格付けにも現れており、2020年10月時点でS&P格付けに置いて最上位の「AAA」を有する世界に2社しか無い企業の一つです。(もう一社はマイクロソフト【MSFT】)
企業情報(創業年・上場年と市場・従業員数・決算・S&P格付け
増配年数 | 58年 |
S&P格付け | AAA |
従業員数 | 132200人 |
創業年 | 1887年 |
上場年 | 1944年 |
決算 | 12月 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】の株価推移
長く市場をアウトパフォームしてきたヘルスケアセクターの代表格とも言える企業であり、長い間株価は上昇し続け長期に渡り右肩上がりしています。
最近少しオピオイド訴訟やベビーパウダーの自主回収などで低調気味ではありますがこれらの問題を過去に何度も乗り越え自社の評判を守り抜いた企業であり、業績には影響ないものと思われます。
新型コロナウイルス(COVID–19)のワクチン開発でも主要な役割を果たしています。私はこの2020年の動きでヘルスケアセクターのように人類の命運に直結する産業の強さを感じました。
PERとPBRの推移

PERは「株価収益率」であり、その株式が収益の何倍で取引されているかを表しており一般的には割安か割高かを測る代表的な指標の一つと言われています。
ただし、これは先行きの業績に対する投資家の期待を表している面もあり低PERの株が本来の価値より割安なのではなく、万年割安株となる可能性もある事に留意しましょう。反対に高PERの株が一概に割高と言った訳でもなく、その高いPERは将来の成長によって正当化される可能性があります。(収益が上る=株価収益率は下がる)
また、自社株買いによってEPS(1株あたり利益)が上がることでもPERは低下します。
PBRは「株価純資産倍率」を表し会社が保有する純資産の何倍で株式が取引されているかを表します。1倍を下回れば会社清算時の残余財産分配額を下回る事になるため割安と言えます。
しかし、不人気な業種だったり将来性が乏しいとされる企業は1倍を切ったまま放置される事がある事とその純資産は全てが換金可能とは限らない事に注意しましょう。
これらは、業種別で比較することでより参考になります。
概ね20~25倍前後のPERで推移し続けている形となりました。
ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】の企業分析・注目ポイントと今後の事業展開
事業構成

事業の構成比率を表しているグラフです。
製薬事業が過半数の構成となりました。製薬事業は常に新しい新薬の開発に追われる事業となります。バフェットはかつてジョンソン・エンド・ジョンソンを1.2%ほど保有していましたが、この製薬事業の比率を高めた時期あたりに経営への疑念を持った事が報道されており、実際に売却されています。
他は医療機器、消費者向け医療用品等の順に続いており製薬部門の他ではしっかりバランスをとっています。
しかし、その後も株価は上昇を続けており基本的にはその後も保有していた投資家も大きなリターンを得られた形です。
国・地域別売上高比率

その企業の売上高が地球上のどこで生み出されたものなのかを表しています。
主に北米で収益を出していますが、残り半分は満遍なく各地に散らばっており世界中で同社の製品が使われている事がわかります。
世界最大の総合ヘルスケア企業
ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界最大の総合ヘルスケア企業です。製薬会社はジェネリック医薬品等の台頭や売れ行きの明るい新薬を開発するか買収するなどして手中に収めることができないと厳しい面がありますが、ジョンソンエンドジョンソンは医薬品のみならず医療機器でも世界トップ級のシェアを誇ります。
長期的に高いリターンをもたらしたヘルスケア業界の代表格ともいえる企業で長期投資に非常に良い対象だと考えています。
ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】の財務分析
直近5年をグラフにしてそれより前のデータがあるとより理解が深まると思われるものはグラフの外で更に5年ほど前まで載せています。
売上高と営業利益等の推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
売上高 | 61,897 | 61,587 | 65,030 | 67,224 | 71,312 | 74,331 |
営業利益 | 16,776 | 16,527 | 16,240 | 17,432 | 18,957 | 20,563 |
売上高と営業利益等、損益計算書項目の推移を示しています。売上高の成長が長い間続いており、いかに業界内で不動の地位を有するかが示されています。
営業利益と純利益の推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
営業利益 | 16,776 | 16,527 | 16,240 | 17,432 | 18,957 | 20,563 |
純利益 | 12,266 | 13,334 | 9,672 | 10,853 | 13,831 | 16,323 |
売上高の成長に対して、近年多くのコストが嵩んだ事や10万件以上抱える訴訟費用やその引き当てなどからここ数年伸び悩んでいます。ジョンソン・エンド・ジョンソンはコスト削減の成否が業績に及ぼす物が大きい事が多々あります。
このように営業利益としては現れていませんが、売上高の成長は後述のキャッシュフローの面で同社の強みとして非常に大きく現れています。
営業利益率と純利益率の推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
営業利益率 | 27.10% | 26.84% | 24.97% | 25.93% | 26.58% | 27.66% |
純利益率 | 19.82% | 21.65% | 14.87% | 16.14% | 19.40% | 21.96% |
営業利益は近年停滞気味ですが、元々の営業利益率が25%前後で安定しているため懸念になる事はないでしょう。
非常に優秀な数値であると思います。
BPS・EPS・SPSの推移

2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
EPS | 5.48 | 5.93 | 0.47 | 5.61 | 5.63 |
過去のデータ
2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
BPS | 18.34 | 20.6 | 22.53 | 23.33 | 26.25 | 25.06 |
EPS | 4.4 | 4.78 | 3.49 | 3.86 | 4.81 | 5.7 |
順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。
EPSを見ていくと右肩上がりというほどではありませんが安定して少しずつ上昇気味に推移しています。為替変動の懸念はありますが、時間をかけて確実な成長を続けています。
一株あたりに直しても特に売上高の成長は顕著に現れています。これがEPSに反映されるようなコスト削減が急がれます。
貸借対照表

貸借対照表の概略です。ここでは特に流動比率を見ると良いでしょう。流動資産が流動負債の額を上回っていれば短期的な債務を早期に完済する事が出来ると見込まれるからです。しかし、流動資産にも即時換金できるものばかりではないため内容が重要な事に注意しましょう。流動比率200%超えや当座(現金同等物)比率100%超えがより厳密に見た安全性の指標とみなされています。
財務はかなり良好で自己資本比率高く、流動資産及び現金同等物で流動負債を完済する事ができる水準です。
この貸借対照表や以下のキャッシュフローは数字のみの記載となっていますが、実際の内容は非常に質の高い財務状況で冒頭に記載の通り、ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界に2社しか無い格付けで最上位のAAAを有する企業の一つです。(もう一社はマイクロソフト【MSFT】)
キャッシュフローの推移

2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
営業CF | 16,571 | 16,385 | 14,298 | 15,396 | 17,414 | 18,471 |
フリーCF | 14,206 | 14,001 | 11,405 | 12,462 | 13,553 | 15,453 |
営業キャッシュフローは営業活動による収支、投資キャッシュフローは投資活動による収支、財務キャッシュフローは借入金の返済や配当・自社株買いなどを表します。新規借入などを行った時はプラスになる事があります。
フリーキャッシュフローは株主にとっては特に重要で会社が自由に使えるお金を指します。これが内部留保になったり、配当・自社株買いの原資となるからです。
EPSに反映されていませんが、売上高と共に営業・フリーキャッシュフローは伸び続けています。この収益力こそ株主還元に積極的な同社の源泉と言えるでしょう。
ROE・自己資本比率・営業キャッシュフローマージンの推移

こちらは経営の効率性を示すROE、健全性を示すROE、営業活動からどれだけ効率的にキャッシュフローを得ているかを示す営業キャッシュフローマージンです。
ROEが高い企業は設備投資や自社株買いを通じて資本を効率的に活用していることを示しているため、高ければ高いほど自己資本比率は下がる傾向にあります。
自己資本比率はその名の通り総資産に占める自己資本の割合で計算されます。財務内容で格付けにおいてAAAを取得し、40%前後の自己資本比率を維持し続けており、問題はないでしょう。
営業キャッシュフローマージンは売上高のうちどれだけの金額を現金で得る事ができたかを見る指標です。高いほど売上額から経費をかけず会社に現金収入をもたらしていると言えます。営業キャッシュフローが営業利益を下回る場合はその営業利益が現金ではない別の入り方をしている事に注意しましょう。
15%を超えていれば良好と言える中で28%近辺を推移しており、かなり良い状況です。
設備投資額と研究開発費の推移

設備投資や研究開発費の多い会社は成長企業と見られ、将来が期待されている事が多いです。中には維持費的なものもあるので多額の設備投資や研究開発費が何を目的にしているかは見極める必要があります。

常に研究開発や設備投資を行い今日の成長に繋がってきた企業であり、毎年設備投資が多くなっています。これは売上高の成長に反映される形で確実に回収されており懸念には及ばないでしょう。
ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】の株主還元(配当と配当性向・増配率)
配当と配当性向・増配率の推移

配当金と配当性向の推移を記載しています。
連続増配かつ配当利回りもが比較的高いにもかかわらず、配当性向が高くて60%台とかなり余裕を持っています。一時的に業績が傾いたとしても減配を心配しなくてよさそうな水準です。2017年だけ異常な配当性向になっていますがこれは税制改正の影響で一時的な物となります。
安定した増配率で成長と増配を今後も続ける事が期待されます。
発行済み株式数の推移

自社株買いなどによって発行済み株式数が減るほど、一株当たりの価値は向上し株主に利益をもたらします。
増配に加えて自社株買いを継続的に行っています。これらの株主還元への姿勢が投資家の信頼につなっています。
まとめ
世界最大のヘルスケア企業で長い歴史を通じて、医薬品と医療機器の分野で株主と社会から信頼を得て成長を続ける有数の優良企業です。
人類の命運を左右するヘルスケアセクターであり、今日のコロナウイルスのワクチン開発でも度々報道を目にします。
非常に幅広く分散された総合ヘルスケア企業であり、医薬品から医療機器まで世界中で事業を継続し成長させてきています。今後の世界で医療・衛生の分野はまだまだ成長余地がありそれによる業績増加と共に増配で株主に高いリターンをもたらすでしょう。