IBM【IBM】の銘柄分析と今後 株価・永遠の不発弾と呼ばれる過去の業界覇者

IBM【IBM】の基本情報と歴史

かつてITの巨人と呼ばれており、コンピュータ創世記における業界の覇者であったIT関連サービス大手です。では、現在はどうなのかと言いますとOSではMicrosoft、クラウドではMicrosoftとAmazonの後塵を拝しクラウド主体の企業に代わるため経営改善を続けています。

世界170カ国以上で大型のシステム開発案件を手掛けています。しかし、長期にわたり大きな成果を出せず毎期減収を披露する銘柄になってしまいました。ウォーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが一度投資をしたものの業を煮やし数年内にすべて売却をしてしまし、本人も「IBMに投資をしたことは間違いだった」と語りその後もことあるごとに投資の失敗としてIBMを例に挙げるほどです。

IBMのクラウドサービスは確かにlaaSの分野ではAmazonのAWSやMicrosoftのAzureの後塵を拝していますがそれでも世界5位、SaaSの分野では世界3位とlaaS以外の事業では非常に安定した事業を展開しています。また、ITサービス売上高では首位世界シェアの6%を持っています。人工知能WatsonなどAIの分野でも強く現在も続く高配当の連続増配株です。成長への期待が薄れていることにより永遠の不発弾なんて言われてしまっていますが…。

企業情報(創業年・上場年と市場・従業員数・決算・S&P格付け

増配年数 26年
S&P格付け A
従業員数 352600人
創業年 1911年
上場年 1915年
決算 12月

IBM【IBM】の株価推移

TradingView提供のIBMチャート


他の既存事業による減収を中核となるITコンサルやクラウド事業の収益で補い、やっと減収に歯止めがかかる見通しとされています。株価は2014年に200ドルを超えましたがその後伸び悩み130~150ドル台を推移するなど低迷が激しいです。2020年に入り、NASDAQ上場銘柄を中心にIT株がS&P500をアウトパフォームしていく中で更に株価は低迷し120ドル台で推移するなど非常に厳しいと言えるでしょう。2019年7月にレッドハットを買収し、2020年10月にはITサービス部門を分社しクラウド事業に専念することを発表しました。特にITサービス部門の分社は短期的には良いニュースと市場から受け止められましたが、これが長期的にいい影響を与え再び成長路線に回帰することができるかどうかがカギです。

クラウドやAIによって再びIBMは成長企業になることができるでしょうか。

事業そのものはやはり長年ITの覇者であったノウハウが残り現在の対法人営業にも強く事業は底堅いです。

PERとPBRの推移

PERは「株価収益率」であり、その株式が収益の何倍で取引されているかを表しており一般的には割安か割高かを測る代表的な指標の一つと言われています。

ただし、これは先行きの業績に対する投資家の期待を表している面もあり低PERの株が本来の価値より割安なのではなく、万年割安株となる可能性もある事に留意しましょう。反対に高PERの株が一概に割高と言った訳でもなく、その高いPERは将来の成長によって正当化される可能性があります。(収益が上る=株価収益率は下がる)

また、自社株買いによってEPS(1株あたり利益)が上がることでもPERは低下します。

PBRは「株価純資産倍率」を表し会社が保有する純資産の何倍で株式が取引されているかを表します。1倍を下回れば会社清算時の残余財産分配額を下回る事になるため割安と言えます。

しかし、不人気な業種だったり将来性が乏しいとされる企業は1倍を切ったまま放置される事がある事とその純資産は全てが換金可能とは限らない事に注意しましょう。

これらは、業種別で比較することでより参考になります。

非常に割安のまま放置されているのが一眼でわかります。Appleもかつては万年割安株などと呼ばれていましたが、見事に成長企業へと変貌を遂げました。

IBMが真の万年割安株にならない事を願う限りです。その成否はクラウド事業が握っていると言っても過言ではありません。

IBM【IBM】の企業分析・注目ポイントと今後の事業展開

事業構成

事業の構成比率を表しているグラフです。ITコンサル等のサービス事業に転換して1990年代の不調から立ち直りましたが、再びIBMは進歩に乗り遅れました。しかし、クラウド事業は年々規模を拡大しつつありこれらの事業の中では大幅な成長を遂げています。

復活の兆しは少しながら見えています。

国・地域別売上高比率

その企業の売上高が地球上のどこで生み出されたものなのかを表しています。

世界中でビジネスを行っているだけに各国でバランスが取れています。

事業構造の転換

IBMは1990年代にも主力であったメインフレームが過去の遺物と化した事から停滞し、IBMは1993年1月13日に発表した1992年決算で49億7000万ドルの損失を発表した。これは当時の単年度の単一企業による損失額としてはアメリカ史上最悪とまで言われました。

その後、ハードウェア中心の事業からコンサル、ソフトウェアなどを中心とする業態に転換し様々なハード関連事業を売却してきました。

主なものとしては以下になります。

1998年回線プロバイダー事業をAT&Tに売却

2003年ハードディスク駆動事業の日立製作所への売却

2005年パソコン事業をLenovoに売却

2007年デジタル印刷事業をリコーに売却

2012年POS事業を東芝テックに売却

こうして、IBMは業績を回復しました。そして、2010年代に再びクラウド事業への乗り遅れから過去の企業と呼ばれ始めています。

1990年代のように復活できるかどうかの鍵を握るのは従来のAIやクラウドなど将来性ある事業でありこれらが生み出す業績がIBMの命運を左右するでしょう。

IBM【IBM】の財務分析

直近5年をグラフにしてそれより前のデータがあるとより理解が深まると思われるものはグラフの外で更に5年ほど前まで載せています。

売上高と営業利益等の推移

2009 2010 2011 2012 2013 2014
売上高 95,758 99,870 106,916 104,507 99,751 92,793
営業利益 18,673 18,673 21,546 22,182 20,341 19,880

 売上高と営業利益等、損益計算書項目の推移を示しています。

売上高と営業利益は共に減少しています。事業の転換を急いでいる最中ですが、それが実を結び現在の投資家が将来報われることを願います。

営業利益と純利益の推移

2009 2010 2011 2012 2013 2014
営業利益 18,673 18,673 21,546 22,182 20,341 19,880
純利益 13,425 14,833 15,855 16,604 16,483 12,022

売上高と同じようにあまり良く無い数字となっています。

営業利益率と純利益率の推移

2009 2010 2011 2012 2013 2014
営業利益率 19.50% 18.70% 20.15% 21.23% 20.39% 21.42%
純利益率 14.02% 14.85% 14.83% 15.89% 16.52% 12.96%

営業利益率などは下がり基調ではあるものの元々さほど酷い数値ではありません。しかし、同業者と比較するとかなり低い数字となります。

利益率の高いクラウド事業が今後どれだけ拡大するかにかかっていそうです。

BPS・EPS・SPSの推移

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
EPS 13.42 12.38 6.14 9.52 10.57

過去のデータ

2009 2010 2011 2012 2013 2014
配当 2.15 2.5 2.9 3.3 3.7 4.25

順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。

株主還元の所で解説しますが、IT関連企業の中ではかなり自社株買いに積極的な方でその成果として一株あたりの指標は特に大きく悪いと感じる要素がありません。

貸借対照表

貸借対照表の概略です。ここでは特に流動比率を見ると良いでしょう。流動資産が流動負債の額を上回っていれば短期的な債務を早期に完済する事が出来ると見込まれるからです。しかし、流動資産にも即時換金できるものばかりではないため内容が重要な事に注意しましょう。流動比率200%超えや当座(現金同等物)比率100%超えがより厳密に見た安全性の指標とみなされています。

レッドハットの買収を行ったこともあり、負債が増えています。懸念といえばこれに尽きると思いますが、分社後のIBMの評価はこの負債分担もかなりの影響を及ぼすことでしょう。

キャッシュフローの推移

2012 2013 2014
営業CF 19,586 17,485 16,868
フリーCF 25,129 16,694 12,863

営業キャッシュフローは営業活動による収支、投資キャッシュフローは投資活動による収支、財務キャッシュフローは借入金の返済や配当・自社株買いなどを表します。新規借入などを行った時はプラスになる事があります。

フリーキャッシュフローは株主にとっては特に重要で会社が自由に使えるお金を指します。これが内部留保になったり、配当・自社株買いの原資となるからです。

キャッシュフローはどれも元々かなり良好な部類で停滞する中でも自社株買いや増配といった手厚い株主還元を続けているその源泉と言えるでしょう。

ROE・自己資本比率・営業キャッシュフローマージンの推移

こちらは経営の効率性を示すROE、健全性を示す自己資本比率、営業活動からどれだけ効率的にキャッシュフローを得ているかを示す営業キャッシュフローマージンです。

ROEが高い企業は設備投資や自社株買いを通じて資本を効率的に活用していることを示しているため、高ければ高いほど自己資本比率は下がる傾向にあります。直近が50%辺りとそれなりに高水準を維持しています。

自己資本比率はその名の通り総資産に占める自己資本の割合で計算されます。IBMは自己資本比率が元々低い水準で推移しています。

営業キャッシュフローマージンは売上高のうちどれだけの金額を現金で得る事ができたかを見る指標です。高いほど売上額から経費をかけず会社に現金収入をもたらしていると言えます。営業キャッシュフローが営業利益を下回る場合はその営業利益が現金ではない別の入り方をしている事に注意しましょう。

15%を超えていれば良好と言えるものなので停滞してもなお良好なラインを維持し続けているといえます。

設備投資額と研究開発費の推移

設備投資や研究開発費の多い会社は成長企業と見られ、将来が期待されている事が多いです。中には維持費的なものもあるので多額の設備投資や研究開発費が何を目的にしているかは見極める必要があります。

世界有数のAI開発に取り組んでいる企業であり、特許数ではトップクラスです。研究開発費た設備投資は一定以上の成果を出しているのでしょう。これが業績に結びつく時を待ちましょう。

の株主還元

配当と配当性向・増配率の推移

 配当金と配当性向の推移を記載しています。

なんと、減収減益でありながらも25年に渡り増配を続けています。それで配当性向も61%とまだ余裕があります。しかし、同業者で配当を出している企業の中では高めであり近年の増配率が下がっている事を考えると経営陣も将来的な厳しさを感じているものと思います。

発行済み株式数の推移

 自社株買いなどによって発行済み株式数が減るほど、一株当たりの価値は向上し株主に利益をもたらします。

従来から非常に積極的な自社株買いを行っていて、これは確実にEPSなどの向上に役立っており株主価値を高める事に貢献しています。

まとめ

laaSの世界では遅れをとっていますが、AIやSaaSの分野などでは今も有力な企業であります。

固有の強みを今も有する世界有数の企業であり、株主還元にも積極的で株価は割安であるため復活の兆しを見せる時が来た時にはIBMの投資家は大きな利益を得る可能性があります。

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