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ウォルト・ディズニー【DIS】の基本情報と歴史
ウォルト・ディズニーは総合娯楽企業の代表格です。テレビ放送・映画・ゲーム・世界各地のテーマパークなど幅広いビジネスを行っています。創業から100年を間近に控えていますが、今なお世界にディズニーの作品は愛されより広がっています。2016年に上海でディズニーランドを開業、近年は動画配信コンテンツに力を入れ始め2017年8月に動画配信会社BAM Techの過半数の株式を取得し、2019年3月に21世紀フォックスを買収したことで世界最大のメディアカンパニーとなりました。
誰もが知る「ミッキーマウス」をはじめとして近代で大ヒットしたものでは「アナと雪の女王」など非常に多岐にわたります。私も子供のころからディズニー作品は好きで観ていました。
長い期間にわたりブランドと成功を築いてきたこの企業のデータを見ていきましょう。
企業情報(創業年・上場年と市場・従業員数・決算・S&P格付け
増配年数 | 0年 |
S&P格付け | A |
従業員数 | 223000人 |
創業年 | 1923年 |
上場年 | 1957年 |
決算 | 9月 |
ウォルト・ディズニー【DIS】の株価推移
長期的に成長してはいますが、急上昇の後に停滞して急上昇といったパターンを繰り返していますね。2019年の11月12日にはDisney+が初日に1000万人のユーザーを獲得したということで株価が7%超の上昇をして最高値を記録しました。
PERとPBR・配当利回りの推移
グラフK バリュエーション
PERは「株価収益率」であり、その株式が収益の何倍で取引されているかを表しており一般的には割安か割高かを測る代表的な指標の一つと言われています。
ただし、これは先行きの業績に対する投資家の期待を表している面もあり低PERの株が本来の価値より割安なのではなく、万年割安株となる可能性もある事に留意しましょう。反対に高PERの株が一概に割高と言った訳でもなく、その高いPERは将来の成長によって正当化される可能性があります。(収益が上る=株価収益率は下がる)
また、自社株買いによってEPS(1株あたり利益)が上がることでもPERは低下します。
PBRは「株価純資産倍率」を表し会社が保有する純資産の何倍で株式が取引されているかを表します。1倍を下回れば会社清算時の残余財産分配額を下回る事になるため割安と言えます。
しかし、不人気な業種だったり将来性が乏しいとされる企業は1倍を切ったまま放置される事がある事とその純資産は全てが換金可能とは限らない事に注意しましょう。
これらは、業種別で比較することでより参考になります。
停滞が見られていた頃は比較的割安に放置されていましたが、近年メディア事業などに参入するなどした事で期待は高まっています。
ウォルト・ディズニー【DIS】の企業分析・注目ポイントと今後の事業展開
事業構成
事業構成
事業の構成比率を表しているグラフです。ディズニーランドなどの運営による収益がかなりの割合を占めていましたが、近年はメディア事業などを筆頭に分散が進んでいます。
コロナウイルスの影響でディズニーランド関連事業はほぼ完全に停止しましたが、メディア事業は好調で上手くカバーする事ができたと言えます。
国・地域別売上高比率
国・地域別売上高比率
その企業の売上高が地球上のどこで生み出されたものなのかを表しています。大多数を北米で稼いでいます。残りでバランスよく世界中に展開されている形です。
新型コロナウイルスの影響からの回復
これは単なるテーマパーク企業ではありません。メディアの巨人は、安定したメディアネットワークセグメントの強みが前回の四半期レポートでテーマパークからの刺激を相殺するのに役立ったため、実際に利益を上げました。Disney +は、ビジネスの最初の年に大ヒットし、6000万人以上の有料加入者を魅了しました。
第2四半期(1〜3月)に減少した利益は約14億ドルに上ったと発表され、7月に予定されていた配当金の支払いも停止しました。そして、第三四半期(4~6月)の決算は、約47億ドルの赤字と非常に大きな被害を受けています。
一方で1億人を超えるユーザー数を誇る、Disney+等のストリーミング配信事業による収益は過去最高に達しました。
ウォルト・ディズニー【DIS】の競合企業とその中での地位
[adsense]ウォルト・ディズニー【DIS】の業績データ
売上高と営業利益等の推移
グラフA 売上高と利益
売上高と営業利益等、損益計算書項目の推移を示しています。売上高は右肩上がりを続けています。この成長はストリーミング配信事業によってさらに加速する事が見込まれています。
営業利益と純利益の推移
グラフB 営業利益と純利益
ここ数年の営業利益等は横ばいですが、10年前と比較すると倍増しています。ストリーミング配信事業が軌道に乗り投資が少なく済むようになってきたらより利益率は向上する事が見込まれます。
営業利益率と純利益率の推移
グラフC 営業利益率と純利益率
営業利益率・純利益率・売上高成長率の推移
グラフD 成長率
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1株の価値(BPS・EPS・SPS・CFPS)の推移
グラフE 1株の価値
グラフE2 1株当たりの売上高
順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。
EPSも着実に成長が続いています。
グラフE3 EPSと1株当たりフリーCFの比較
順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)CFPS(1株あたりフリーキャッシュフロー)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。
CFPSは会計上の利益では無くフリーキャッシュフローの面から数字を出します。基本的にEPSと一致しますが、会計処理の方法が変わったり「純利益は減少したがフリーCFは増加した」場合などにより正確な情報を読み取る事ができます。
キャッシュフローの推移
グラフH キャッシュフロー
営業キャッシュフローは営業活動による収支、投資キャッシュフローは投資活動による収支、財務キャッシュフローは借入金の返済や配当・自社株買いなどを表します。新規借入などを行った時はプラスになる事があります。
フリーキャッシュフローは株主にとっては特に重要で会社が自由に使えるお金を指します。これが内部留保になったり、配当・自社株買いの原資となるからです。
ここでは主に営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローを紹介します。投資や財務コストに関しては設備投資やインスタント・カバレッジ・レシオを参照ください。
グラフS キャッシュフロー比率
営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローの成長率と売上高に対する投資の規模を示しています。
投資がどれだけ売上高に結びついているかを知ることができます。
ウォルト・ディズニー【DIS】の株主還元の推移
配当金・配当性向・増配率の推移
グラフF 配当と配当性向・増配率
配当金と配当性向・増配率の推移を記載しています。配当金は増加を続けていましたが、2020年にディズニーランドの閉鎖など事業に大きな危機が迫った事で資金の確保を目的に配当金の支払いを2020年の7月から停止しています。
元々の配当性向は低く今後経済が再開するに当たって通常時の配当は十分な余裕を持って支払われていると言えます。
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発行済み株式数の推移
グラフL 発行済み株式数
自社株買いなどによって発行済み株式数が減るほど、一株当たりの価値は向上し株主に利益をもたらします。
2019年は21世紀フォックスの買収などで安定した資金需要があったために増資を行ったものと思われます。
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ウォルト・ディズニー【DIS】の財務諸表と財務データ
グラフO・P 貸借対照表
貸借対照表の各項目を構成比率で表しています。企業の大まかな財務状況の推移が一目でわかります。
それぞれが貸方(総資産)、借方(負債と純資産)を表します。
貸借対照表の概略です。ここでは特に流動比率を見ると良いでしょう。流動資産が流動負債の額を上回っていれば短期的な債務を早期に完済する事が出来ると見込まれるからです。しかし、流動資産にも即時換金できるものばかりではないため内容が重要な事に注意しましょう。流動比率200%超えや当座(現金同等物)比率100%超えがより厳密に見た安全性の指標とみなされています。
2018年の買収を機に拡大している以外はゆっくりと規模が拡大しています。
グラフR 損益計算書(費用と利益)
業績の蘭で紹介済みの収益に対応した損益計算書の費用項目と残った利益を表記しています。
財務状態と健全性
グラフG 財務データ
ここでは、有利子負債比率・自己資本比率を紹介します。この自己資本比率と有利子負債比率は企業の健全性を大きく表しているので注目しましょう。
グラフQ 財務比率
流動比率、当座比率、財務レバレッジ、負債比率を示しています。
流動比率は流動負債に対する流動資産の割合で計算され、短期的な支払い能力を示しています。当座比率は、流動資産の中で「現金預金」「受取手形」「売掛金」などの現金化しやすい資産だけで計算される、流動比率よりも厳しい基準で見た短期的支払い能力の指標です。
財務レバレッジ銀行借入や社債発行などを活用して自己資本を梃子(レバレッジ)にどれだけ負債を活用しているかを示しています。後述される自己資本比率の逆数関係にあり、負債をどのくらい有効活用しているかを表すため、この倍率が高くなると、負債増加によるリスクが顕在化するため注意する必要があります。
設備投資額と研究開発費・減価償却費の推移
グラフJ 事業投資
設備投資や研究開発費の多い会社は成長企業と見られ、将来が期待されている事が多いです。中には維持費的なものもあるので多額の設備投資や研究開発費が何を目的にしているかは見極める必要があります。
設備投資の増加はストリーミング配信事業等に関するものが含まれています。
ROE・ROA・営業キャッシュフローマージンの推移
グラフI 経営の効率性
こちらは経営の効率性を示すROEとROA、営業活動からどれだけ効率的にキャッシュフローを得ているかを示す営業キャッシュフローマージンです。
ROEが高い企業は設備投資や自社株買いを通じて資本を効率的に活用していることを示しているため、高ければ高いほど自己資本比率は下がる傾向にあります。
ROAは総資産利益率を表しており、会社が有する資産を活用してどれほどの利益を上げる事ができているかを表しています。
営業キャッシュフローマージンは売上高のうちどれだけの金額を現金で得る事ができたかを見る指標です。高いほど売上額から経費をかけず会社に現金収入をもたらしていると言えます。営業キャッシュフローが営業利益を下回る場合はその営業利益が現金ではない別の入り方をしている事に注意しましょう。
一概に言えるものではありませんが、15%を超えていれば良好と言えるでしょう。基本的に20%近辺で推移しており優秀と言えます。
グラフI-2 経営の効率性2
こちらでは投下資本利益率(ROIC)、インスタント・カバレッジ・レシオ、資産回転率の推移を示すグラフを掲載しています。
投下資本利益率は自己資本や有利子負債も含めた事業活動のために行われた投資がどれだけの利益を生み出したかを数字にしています。
インスタント・カバレッジ・レシオは、会社が営業活動により生み出す利益(基本的に営業利益)と金融収益(受取利息と受取配当金が主に該当)が、毎年の支払利息をどの程度上回っているかを示しており、 企業の財務健全性を示す数値であり、この数値が高いほど金利の支払いなどに関して財務的に余裕があります。反対に比率が低いと営業収益のうち多くの割合が支払利息に当てられる形で負債元本が減らず、財務上厳しい状態にあります。
総資産回転率は企業の資産が効率的に売上に結びついていることを表す指標であり、企業の総資産が1年に何回売上高という形で回転したのかを示しています。
財務効率と回転率等
ここでは財務効率などに関連した数値を解説していきます。
グラフU 財務効率
ここでは、売掛金回収期間と在庫日数、回収期間、現金循環日数を紹介していきます。
売掛金回収期間は売掛金がどれくらいの期間をかけて回収されているかを日数で表しており、その日数が短いほど現金化までにかかる期間が短く資金を効率的に活用できていることになります。
在庫日数は在庫として滞留している日数を表しています。在庫として保有している商品の総数が売上の何日分と言い換えることも出来、この日数が少ないほど在庫量は適正な数にコントロールできていると考える事ができます。
回収期間は投資金額が投資によって生まれるキャッシュフローで計算して何年で回収することが出来ているかを表します。設備投資に関する収益性計算には様々な方法が存在しますが回収期間を指標とした場合、この期間が短いほど安全に効率的な投資ができていると考える事ができます。
現金循環日数は「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」とも言われ、企業が商品を仕入れるために支出を行なってから売上及び売上債権の回収によって現金を得るまでの期間を指します。この日数が長いほど、手元の現金が減っている期間が長い事になり資金繰りの懸念が現れるため、経営状態を表す重要な指標とも言えます。
グラフV 財務効率 回転率
ここでは、回転率を中心に解説します。売上債権回転率、棚卸資産回転率 固定資産回転率 資産回転率を紹介しています。
売上債権回転率は会社が有する売上債権の回収がどのくらいの期間で行われているかを示す指標で、この数字が低いほど債券の回収に時間がかかっており、資金の効率的な活用が妨げられている事になります。
棚卸資産回転率は在庫回転率と言われることもあり、仕入から売上に至るまでの在庫期間によって適切な在庫量などの判断をするための指標であり、在庫を減らしている会社はこの比率が高くなります。在庫回転率が低いと言う事は顧客に販売される事なく在庫として保持する数が多く、管理コストや廃棄リスクを負っていることになります。
固定資産回転率は保有する固定資産が効率的に活用されているかを示しています。この比率が低い場合は保有する固定資産が有効に活用されることなく滞留している疑いがあり、固定資産への投資が過剰である可能性があります。
総資産回転率は企業の資産がどれだけ効率的に売上に結びついているかを表す指標であり、企業の総資産が1年に何回売上高という形で回転したのかを示しています。売上高が総資産の何倍あるかを見ることでその売上に貢献した企業の総資産がどれほど効率的に活用されているかを測ります。(「グラフI-2 経営の効率性2」で解説済みです)
まとめ
長く世代を超えて愛されてきた作品を多く有する同社です。現在は新型コロナによる巣篭もり需要で大きな被害を受けていますが、回復時には再び大きな成長による利益が見込めます。
現在もストリーミング配信事業は好調で時代にあった事業展開で世界中の人々にディズニー作品を届け続けています。