目次
コストコ【COST】の基本情報と歴史
有料会員制の量販店大手です。柱は会員収入で入荷して店内のパレットに乗った商品を大型の倉庫に並べてそのまま販売する事で陳列等の管理にかかるコストを削減し低価格販売を行っています。大型の倉庫型店舗が発祥だけあって日用品・生鮮食品・衣服・家電まで幅広く扱います。
企業情報(創業年・上場年と市場・従業員数・決算・S&P格付け
増配年数 | 17年 |
S&P格付け | A+ |
従業員数 | 201500人 |
創業年 | 1976年 |
上場年 | 1993年 |
決算 | 8月 |
コストコ【COST】の株価推移
コストコの店舗拡大と米国の個人消費の堅調さに伴い株価はここ数年で急上昇しています。500店舗以上を運営するアメリカ国内での業績が堅調であり、その他の国への進出も順調であることから長期的な成長は続くと見られます。
PERとPBR・配当利回りの推移
グラフK バリュエーション
PERは「株価収益率」であり、その株式が収益の何倍で取引されているかを表しており一般的には割安か割高かを測る代表的な指標の一つと言われています。
ただし、これは先行きの業績に対する投資家の期待を表している面もあり低PERの株が本来の価値より割安なのではなく、万年割安株となる可能性もある事に留意しましょう。反対に高PERの株が一概に割高と言った訳でもなく、その高いPERは将来の成長によって正当化される可能性があります。(収益が上る=株価収益率は下がる)
また、自社株買いによってEPS(1株あたり利益)が上がることでもPERは低下します。
PBRは「株価純資産倍率」を表し会社が保有する純資産の何倍で株式が取引されているかを表します。1倍を下回れば会社清算時の残余財産分配額を下回る事になるため割安と言えます。
しかし、不人気な業種だったり将来性が乏しいとされる企業は1倍を切ったまま放置される事がある事とその純資産は全てが換金可能とは限らない事に注意しましょう。
これらは、業種別で比較することでより参考になります。
配当利回りも合わせてこれらの数値で直近の株価が割高なのか割安なのかを知る事ができます。
コストコの売上高や利益は伸びていますが成長に伴いPERはそれ以上の成長をしています。
コストコ【COST】の決算情報
コストコ【COST】第1四半期決算 2021年5月4日 | ||||
実績 | 市場予想 | 前年同月比 | 備考 | |
売上高 | 452.8億ドル | 435.1億ドル | 21%増加 | |
EPS | 2.75 | 2.33ドル | ||
既存点売上高成長率 | 20.6%増加 | 16%増加 | 4.8%増加 | |
会費収入 | 9.01億ドル | 8.74億ドル | 11%増加 |
コストコの第三四半期決算は売上高とEPS共に市場予想を上回りました。
コストコ【COST】の企業分析・注目ポイントと今後の事業展開
事業構成
事業構成
事業の構成比率を表しているグラフです。原価で陳列し会員費で収益を上げているに近い構造であるため、年会費が多くを占めているため、会員数の増加はコストコの収益を支えていると言っても過言ではなく、会員数にも注目が必要です。
会員数は2020年5月時点で1億2千万人います。
会費収入は増加を続けています。
国・地域別売上高比率
国・地域別売上高
その企業の売上高が地球上のどこで生み出されたものなのかを表しています。米国とカナダでの売上高が大多数を占めていますが、日本など世界中に出店を積極的に進めています。
世界中で拡大を続ける会員制小売店
コストコは小売業首位のウォルマートに次ぐ世界2位の規模の企業です。ウォルマートが低価格層から人気があるのに対し、コストコは中間層からの人気が強いです。
大規模な小売店としては少ない品数と言える約4000種類を大量に仕入れ、大きな倉庫が元になった店舗にそのまま陳列することで価格を下げて、年会費と圧倒的な取引量で利益を出す典型的な薄利多売モデルです。
有料会員に優良で低価格な商品販売を行うというスタイルから顧客の囲い込みに成功し、近年急速に拡大しています。
急速な成長と共にPERも上がっていますが、既に世界で10000店舗を超えているウォルマートと比較するとコストコは789店舗とまだまだ拡大の余地があります。
AmazonなどEコマース大手が主要なライバルとなっていくので要注目な面はあるでしょう。
コストコ【COST】の競合企業とその中での地位
コストコ【COST】の業績データ
売上高と営業利益等の推移
グラフA 売上高と利益
売上高と営業利益の推移を示しています。売上高はコストコの進出拡大とともに右肩上がりで成長が続いています。
営業利益と純利益の推移
グラフB 営業利益と純利益
売上高に比例する形で営業利益と純利益も成長が続いています。
営業利益率と純利益率の推移
グラフC 営業利益率と純利益率
営業利益率も大方成長が続いています。規模拡大により費用の割合が相対的に減ったことによるものです。
小売業の営業利益率としては妥当な水準でしょう。
営業利益率・純利益率・売上高成長率の推移
グラフD 成長率
成長率はゆっくりと下がっていますが、それでも12~2%とプラス成長を続けています。複利考えると大きくなっていることは売上高その他の数字が表しています。
1株の価値(BPS・EPS・SPS・CFPS)の推移
グラフE 1株の価値
EPSは10年で約3倍になりました。
グラフE2 1株当たりの売上高
一株あたりの売上高も右肩上がりを続けています。
グラフE3 EPSと1株当たりフリーCFの比較
順にBPS(一株当たりの純資産)EPS(一株当たり純利益)SPS(一株当たり売上高)CFPS(1株あたりフリーキャッシュフロー)を示しています。これらは一株当たりの価値を測る数字として有効です。
CFPSは会計上の利益では無くフリーキャッシュフローの面から数字を出します。基本的にEPSと一致しますが、会計処理の方法が変わったり「純利益は減少したがフリーCFは増加した」場合などにより正確な情報を読み取る事ができます。
キャッシュフローの推移
グラフH キャッシュフロー
営業キャッシュフローは営業活動による収支、投資キャッシュフローは投資活動による収支、財務キャッシュフローは借入金の返済や配当・自社株買いなどを表します。新規借入などを行った時はプラスになる事があります。
フリーキャッシュフローは株主にとっては特に重要で会社が自由に使えるお金を指します。これが内部留保になったり、配当・自社株買いの原資となるからです。
キャッシュフローも年々巨額化を続けており、株主還元の源泉となっています。
コストコ【COST】の株主還元の推移
配当金・配当性向・増配率の推移
グラフF 配当と配当性向・増配率
増配率は2桁を維持し続けており、極めて高いです。長く持ち続けることで高利回りの株になる可能性を持っています。
なお、数年に一度特別配当も行なっており、これが実質配当利回りを更に増加させています。バリュエーションの上昇からか経営陣は自社株買いよりも配当に重点を置く気配が見られます。
発行済み株式数の推移
発行済み株式数
自社株買いなどによって発行済み株式数が減るほど、一株当たりの価値は向上し株主に利益をもたらします。
一時は発行済み株式数が減っていましたが、近年は拡大に伴い増加しています。しかし、これを上回る勢いでEPSは成長しているため問題ないでしょう。
[adsense]コストコ【COST】の財務状況
財務状態と健全性
グラフG 財務データ
ここでは、総資産・自己資本・有利子負債・自己資本比率を紹介します。特に自己資本比率と有利子負債は企業の健全性を大きく表しているので注目しましょう。
自己資本比率をはじめとした財務状況は安定しています。下り基調ではあるものの危険なほどではないでしょう。
設備投資額と研究開発費・減価償却費の推移
グラフJ 事業投資
設備投資や研究開発費・減価償却費の多い会社は成長企業と見られ、将来が期待されている事が多いです。中には維持費的なものもあるので多額の設備投資や研究開発費が何を目的にしているかは見極める必要があります。
これらにより企業がどのように投資を行っているかを知る事ができます。
毎年、多くの事業投資が継続されています。
ROE・ROA・営業キャッシュフローマージンの推移
グラフI 経営の効率性
こちらは経営の効率性を示すROEとROA、営業活動からどれだけ効率的にキャッシュフローを得ているかを示す営業キャッシュフローマージンです。
ROEが高い企業は設備投資や自社株買いを通じて資本を効率的に活用していることを示しているため、高ければ高いほど自己資本比率は下がる傾向にあり、こちらは年々上昇して現在は26%近辺となっています。
ROAは総資産利益率を表しており、会社が有する資産を活用してどれほどの利益を上げる事ができているかを表しています。
営業キャッシュフローマージンは売上高のうちどれだけの金額を現金で得る事ができたかを見る指標です。高いほど売上額から経費をかけず会社に現金収入をもたらしていると言えます。営業キャッシュフローが営業利益を下回る場合はその営業利益が現金ではない別の入り方をしている事に注意しましょう。
まとめ
世界で急拡大を続けており、日本にも進出してきたコストコを紹介しました。大量仕入れによりコストを下げ、会員制にすることで安定した収益を確保できるのが他の小売店とは違ったビジネスモデルとなっています。
今後の成長を見込むこともできる投資先の一つだと考えています。